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Web制作の「相見積もり」で最安値の会社を選んで失敗した実話

稟議書が通り、プロジェクトが始まった瞬間は、誰もが「良い買い物をした」と思っていました。

A社は300万円、B社は200万円。そしてC社は80万円。
「機能要件は満たしているし、デザインも悪くない。なら安い方がいいに決まっている」

経営陣のこの判断により、最安値のC社に発注が決まりました。しかし、その3ヶ月後。担当者は納期遅れの謝罪に追われ、出来上がったサイトは使い物にならず、最終的に別の会社で「作り直し」をすることになりました。結果として、コストは当初の予算を遥かに超え、半年という貴重な時間をドブに捨てたのです。

これは作り話ではありません。Web制作業界で、毎日のように繰り返されている「安物買いの銭失い」の典型的な実話です。

なぜ、見積もりの金額にこれほどの差が出るのか。安い会社は「企業努力」で安くしているのでしょうか? 残念ながら違います。彼らは、Web制作において最も重要なプロセスを「削除」することで安くしているのです。

本記事では、相見積もりで「最安値」を選んだ企業に降りかかるリアルな失敗談と、見積書には書かれていない「安さのカラクリ」について解説します。

安さの裏にある「削除された工程」の正体

見積もりが他社の半額以下である場合、そこには必ず理由があります。技術力が低いから安いのではありません。「やるべきことをやらない」から安いのです。具体的に削除されているのは、以下の3つの重要な工程です。

1. ヒアリングと戦略設計の欠如

失敗したプロジェクトの最初の違和感は、キックオフミーティングで訪れました。C社の担当者は「では、原稿と素材をください。その通りに作ります」と言ったきり、提案を一言もしなかったのです。

本来、制作費用の多くは「考える時間(設計)」に充てられます。「御社の競合はどこか」「ターゲットはどんな悩みを抱えているか」。これらをヒアリングし、勝ち筋を見つける工程こそがプロの仕事です。
しかし、格安業者はこの工程をすべてカットします。彼らにとってのWeb制作とは「マーケティング」ではなく、単なる「データ入力作業」だからです。結果、出来上がるのは「情報は載っているが、誰の心にも響かないサイト」です。

2. 「ディレクター」という翻訳者の不在

プロジェクトが始まると、C社との連絡が噛み合わなくなりました。「トップページを修正して」と伝えても、意図と違う修正が上がってくる。専門用語ばかりで何を言っているか分からない。

これは、プロジェクトを管理する「Webディレクター」が存在しない(または機能していない)ことによる弊害です。
格安業者は人件費を削るため、エンジニアやデザイナーと直接やり取りをさせることがあります。しかし、ビジネスの言語と技術の言語は異なります。その間を取り持ち、進行管理を行う翻訳者(ディレクター)がいなければ、担当者様がその役割を担うことになります。お客様の工数が膨大に取られるという「見えないコスト」がここで発生します。

3. テンプレートへの無理な流し込み

デザイン案が上がってきた時、担当者は愕然としました。「どこかで見たことがある」デザインだったからです。

「オリジナルデザイン」と謳っていても、格安業者の多くは既存のテンプレート(ひな形)を使い回しています。テンプレート自体が悪ではありませんが、問題は「御社の強み」を無視して、枠に無理やり押し込むことです。
「この写真はもっと大きく見せたい」と言っても、「仕様上できません」と断られる。結果、企業の個性は死に、競合他社と代わり映えのしない量産型サイトが完成します。

これらは、契約書にハンコを押した後では取り返しがつかない事態です。もし、現在お手元にある見積もりの金額差に不安を感じているなら、一度その内訳をプロの視点で診断させてください。[ >> CagraPROに無料相談する ]

「安さ」のリスクは、制作中だけではありません。本当の地獄は、サイトが公開された「後」にやってきます。

公開後に発覚する「安物」の致命的な欠陥

サイトが完成し、請求書を払い終わった後。本当の意味での「安さの代償」が牙を剥きます。最安値の制作会社が納品するサイトは、運用フェーズにおいて以下のような時限爆弾を抱えていることが多いのです。

誰も触れない「スパゲッティコード」

「新着情報を更新したい」「バナーを差し替えたい」。そう思って社内で修正しようとした時、あるいは別の制作会社に改修を依頼した時、問題が発覚します。

「コードがぐちゃぐちゃで、手を入れると全体が壊れます。修正するには作り直すしかありません」

安く請け負う業者は、スピードを最優先するため、プログラムの記述(ソースコード)のルールを無視した突貫工事を行います。これを業界用語で「スパゲッティコード」と呼びます。
見た目は普通でも、裏側は複雑に絡み合い、拡張性がゼロの状態。つまり、そのサイトは「使い捨て」の商品だったということです。長くビジネスを支える基盤にはなり得ません。

セキュリティリスクと「売り逃げ」

格安業者の多くは「作って終わり」のスタンスです。納品後の保守サポートが含まれていない、あるいは極端に手薄なケースが目立ちます。

WordPressなどのシステムは、定期的なアップデートを行わないと、セキュリティの脆弱性が放置され、ハッキングや改ざんのリスクに晒されます。
「安く作ってもらった会社に相談しようとしたら、すでに連絡が取れなくなっていた(倒産していた)」という話も、悲しいかな珍しくありません。結果として、信頼できる会社にセキュリティ対策を一から依頼することになり、トータルの出費は最初からまともな会社に頼むより高くついてしまうのです。

見積書で見抜く「危険な安さ」のサイン

では、相見積もりにおいて、このような地雷案件を回避するにはどこを見ればよいのでしょうか。合計金額ではなく、「内訳」に注目してください。

「ディレクション費・企画費」の有無

見積もりの項目に「ディレクション費」や「企画構成費」が入っているか、そしてそれが適正な価格(一般的に総額の10%〜30%程度)かを確認してください。

ここが「0円」や極端に安い場合、それは「御社のビジネスについては何も考えません」「言われたことしかしません」という宣言です。
プロの制作会社は、この「考える時間」にこそ価値があることを知っているため、ここの費用を安易に削ることはしません。企画費は、成功確率を買うための保険料だと考えてください。

「検証端末」の範囲

「スマホ対応」と書いてあっても、その検証範囲が曖昧な業者は危険です。
「iPhoneの最新機種だけで確認する」のと、「過去3年分の主要なiPhoneとAndroid端末、iPad、各種ブラウザで表示崩れがないか検証する」のでは、工数が数倍違います。
安い業者はここをサボります。その結果、「社長のAndroidスマホで見たらレイアウトが崩れていた」というトラブルが発生します。見積もりの前提条件(検証範囲)を確認することで、その会社の品質へのスタンスが見抜けます。

まとめ:Webサイトは「消費」ではなく「投資」である

相見積もりで最安値を選ぶことが、常に間違いだとは言いません。使い捨てのキャンペーンサイトや、とりあえず存在すればいいだけのサイトなら、安さは正義です。

しかし、これから数年にわたって御社の顔となり、営業マンの代わりに24時間働き、売上を作るための「コーポレートサイト」においては、過度な安さはリスクでしかありません。

300万円のサイトが、年間3,000万円の売上を作れば、それは「安い買い物」です。
80万円のサイトが、年間1円も売上を作らず、修正費用ばかりかかれば、それは「高い買い物」です。

目先の出費(イニシャルコスト)だけでなく、将来得られる利益(ROI)を見て判断してください。
「適正価格」には理由があります。CagraPROの見積もりが他社より安くないとしたら、それは御社のビジネスを成功させるために、絶対に削ってはいけない工程を、責任を持って計上しているからです。

「安く作りたい」ではなく「成果を出したい」とお考えであれば、ぜひ私たちにお声がけください。その予算内で実現できる最高の戦略をご提案します。

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著者:清宮 雄(株式会社カグラ 代表取締役) マーケティング、ブランディングおよび企業経営の領域において20年以上の実務経験を有する。国内外にてIT事業および教育事業を展開。