カテゴリー
Webサイト制作

英語サイト(多言語化)を作る際、自動翻訳ツールを入れてはいけない理由

越境ECや海外進出の機運が高まる中、自社サイトの「多言語化」は避けて通れない課題です。しかし、予算や手間を惜しんで、Google翻訳やDeepLなどの自動翻訳プラグイン(ウィジェット)をサイトにそのまま導入しようとしていないでしょうか。

結論から申し上げます。BtoB企業として海外の信頼を勝ち取りたいのであれば、Webサイトへの自動翻訳ツールの導入は「厳禁」です。

確かにAI翻訳の精度は飛躍的に向上しました。しかし、それはあくまで「テキストの意味を通じさせる」レベルの話です。ビジネスにおけるWebサイトの役割は、単なる情報の伝達ではなく、「信頼の醸成」と「成約」です。安易な自動翻訳は、海外の顧客に対して「私たちはあなた方を重要視していません」という誤ったメッセージを発信し、ブランド価値を著しく毀損するリスクがあります。
なぜ自動翻訳ツールに頼ってはいけないのか、その理由を実務的な観点から解説します。

文脈の欠如が招く「プロフェッショナリズム」の欠如

AIは単語を訳すことはできても、文脈やその背後にある「ビジネスの機微」までは汲み取れません。特に日本語は、主語を省略したり、曖昧な表現を好んだりするハイコンテクストな言語です。これを機械的に英語化すると、致命的な誤解を生む可能性があります。

業界用語とニュアンスの不一致

例えば、日本のビジネスでよく使われる「取引先」という言葉。文脈によって「Client(顧客)」「Vendor(仕入先)」「Partner(提携先)」と使い分ける必要がありますが、自動翻訳はこれを一律に訳してしまうことがあります。
また、「よろしくお願いいたします」のような定型句も、直訳すると英語圏では不自然極まりない文章になります。Web制作やシステム開発などの専門的な分野であれば尚更です。専門用語の定義がズレているサイトは、読み手である海外の担当者に「この会社は専門性が低い」「業界のスタンダードを理解していない」という印象を与え、その時点で検討リストから外されてしまいます。

主語の欠落による責任所在の曖昧さ

日本語の「(弊社は)〜と考えます」や「(システムが)〜を処理します」といった文章において、主語が省略されている場合、機械翻訳は誤った主語を補完してしまうことが多々あります。
「We」が主語になるべきところで「It」や「They」が使われたり、その逆が起きたりします。BtoB契約において「誰が何をするのか」は最も重要な要素です。ここが曖昧なまま翻訳された文章は、法的なリスクすら感じさせるため、まともな企業であれば問い合わせを躊躇するでしょう。

SEO(検索エンジン最適化)における壊滅的なデメリット

「英語サイトを作れば、世界中から検索される」というのは幻想です。特にJavaScriptなどで動的に翻訳を表示するタイプのツールを使用している場合、SEO上の効果は皆無、あるいはマイナスに働きます。

検索エンジンにインデックスされないリスク

Googleなどの検索エンジンは、基本的にページのHTMLソースコードを読み取って内容を理解します。しかし、多くの自動翻訳プラグインは、ブラウザ上で表示する瞬間にテキストを差し替える仕組みで動いています。
つまり、検索エンジンのロボット(クローラー)から見れば、そのページは「日本語のまま」なのです。英語で検索している海外ユーザーの検索結果に、あなたのサイトが表示されることは永遠にありません。これでは、何のために多言語化したのか、その目的自体が失われてしまいます。

キーワード戦略の不在

仮に翻訳されたテキストがインデックスされたとしても、直訳された英語は、現地のユーザーが実際に検索するキーワードと一致しません。
例えば「Web制作」を直訳すれば「Web Production」などになりますが、英語圏のユーザーは「Web Design」や「Web Development」と検索するのが一般的です。自動翻訳では、このような「検索意図に合わせた用語の最適化」が不可能です。現地の市場で戦うためには、翻訳ではなく、ターゲット市場に合わせたキーワード選定から始まる「ローカライゼーション(現地化)」が必須です。

UX(ユーザー体験)の崩壊とレイアウト崩れ

言語が変われば、文字の長さや文法構造も変わります。日本語のデザインをそのままにテキストだけを英語に置き換えると、Webサイトの見た目は見るも無惨な状態になります。

文字数増加によるデザインの破綻

一般的に、日本語を英語に翻訳すると、テキストの分量は1.5倍から2倍近くに増える傾向があります。日本語のコンパクトな見出しに合わせて作られたボタンやバナーの中に、長い英語を流し込めば、文字が枠からはみ出したり、不自然な改行が入ったりします。
レイアウトが崩れたサイトは、「管理が行き届いていない」「使いにくい」というストレスをユーザーに与えます。特にモバイル端末での閲覧時には、この崩れが致命的な操作性の悪化を招き、離脱率を急上昇させる原因となります。

これらを社内だけで解決するのは困難です。もしプロの視点で診断してほしい場合は、無料相談をご活用ください。[ >> CagraPROに無料相談する ] さて、次は「翻訳」と「ローカライズ」の決定的な違いについて見ていきましょう。

ナビゲーションと導線の不整合

日本独自の商習慣に基づいたサイト構造(例えば「会社概要」の中に詳細な沿革や代表挨拶が長々と続くなど)は、結論を急ぐ欧米のユーザーにとっては不親切な場合があります。
自動翻訳ツールを入れるだけでは、この「情報の見せ方」までは変わりません。英語圏のユーザーにとって直感的でないナビゲーションは、CV(コンバージョン)への到達を阻害します。言語を変える際は、サイトマップや導線設計そのものを、ターゲット国に合わせて再構築する必要があるのです。

表示速度の低下と技術的な負債

Webサイトのパフォーマンスは、ユーザーの離脱率に直結するだけでなく、SEOの評価指標(Core Web Vitals)にも大きく影響します。安易な翻訳ツールの導入は、このパフォーマンスを犠牲にする行為でもあります。

外部スクリプト読み込みによる遅延

Google翻訳やDeepLなどのウィジェット型ツールは、外部のJavaScriptを読み込んで動作します。ページを開くたびに翻訳サーバーとの通信が発生し、コンテンツの描画をブロックしたり、動作を重くしたりする原因となります。
「たかが数秒」と思うかもしれませんが、通信環境が日本ほど整っていない国や地域からのアクセスを想定する場合、この遅延は致命的です。サクサク動かないサイトは、コンテンツを読む前にブラウザバックされ、二度と戻ってきてもらえません。

意図しない動作不良と干渉

Webサイトには、問い合わせフォームやスライダー、ポップアップなど、様々な動的要素が組み込まれています。自動翻訳ツールがHTMLの構造を強引に書き換えることで、これらのJavaScriptが誤作動を起こすケースが後を絶ちません。
「フォームの送信ボタンが押せない」「メニューが開かない」といった不具合は、機会損失に直結します。しかも、こうした不具合は特定の言語に切り替えた時にのみ発生することが多く、発見が遅れるリスクも孕んでいます。

CagraPROが提唱する「正しい多言語化」のアプローチ

では、予算が限られている中小企業は海外対応を諦めるべきなのでしょうか。いいえ、違います。「全ページを自動翻訳で網羅する」という発想を捨て、「重要なページだけを完璧にローカライズする」という戦略に切り替えれば良いのです。

ページ数を絞り、質を高める

日本語サイトのすべてのブログ記事やニュースを英語化する必要はありません。海外の顧客が知りたい情報は、「誰なのか(会社概要)」「何ができるのか(サービス・製品)」「どう連絡すればいいのか(問合せ)」の3点に集約されます。
100ページを機械翻訳で垂れ流すよりも、この核となる5ページを、ネイティブレベルの英語(または現地語)でしっかりと作り込む方が、遥かにビジネス上の信頼を獲得できます。

翻訳ではなく「リライト(書き直し)」をする

日本語の原稿をそのまま翻訳者に渡すのも推奨しません。前述の通り、文脈や商習慣が異なるからです。
ターゲット国の市場に合わせて、「何が売りになるか」を再定義し、原稿そのものを海外向けに書き直す(リライトする)工程が必要です。CagraPROでは、単なる翻訳作業ではなく、マーケティング視点を持った「英語版サイト構築」として、コンテンツの再設計から提案します。

まとめ

「とりあえず翻訳ツールを入れておけば、海外の人も見てくれるだろう」という考えは、厳しい言い方をすれば「思考停止」です。それは、海外の顧客に対して失礼であり、自社のブランド価値を自ら貶める行為に他なりません。
言葉は、ビジネスの魂です。不自然な英語で溢れたサイトは、あなたの会社の技術やサービスまで「不完全なもの」だと思わせてしまいます。
ツールに依存せず、ターゲットと真摯に向き合う「ローカライズ」を行うこと。それが、遠回りのようでいて、確実に海外市場での成果に繋がる唯一の道です。

[ >> カグラプロへのお問合せはこちら ]

著者:清宮 雄(株式会社カグラ 代表取締役) マーケティング、ブランディングおよび企業経営の領域において20年以上の実務経験を有する。国内外にてIT事業および教育事業を展開。