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Webサイト制作

社長が思う「良いサイト」と、顧客が思う「良いサイト」のズレ

リニューアルプロジェクトの定例会議。デザイナーが提案したトップページの案を見た瞬間、社長が渋い顔をしてこう言います。「なんだか、インパクトが足りないな。もっとこう、シュッと動いて、感動させるようなサイトにならないか?」

担当者は頭を抱えます。なぜなら、そのデザインはターゲットユーザーの動線を徹底的に分析し、最も成果が出ると予測された構成だったからです。しかし、決裁権を持つトップの一声で、プロジェクトは「社長好みのカッコいいサイト」を作る方向へ大きく舵を切ってしまいます。

これは決して珍しい光景ではありません。多くの企業で繰り返される悲劇です。しかし、はっきり申し上げます。この「社長が思う良いサイト」と「顧客が思う良いサイト」のズレこそが、Web活用が失敗する最大の要因です。Webサイトは誰のためにあるのか。その根本的な認識の不一致が、数百万、数千万という投資を無駄にさせています。今回は、この危険な「ズレ」の正体と、それを解消し、真に成果を出すサイトへ着地させるための視点を共有します。

社長が見ているのは「自意識」、顧客が見ているのは「課題」

なぜ、社長と顧客の間で「良いサイト」の定義がこれほどまでに食い違うのでしょうか。それは、Webサイトに対峙する時の「心理状態」と「目的」が根本的に異なるからです。

経営者にとって、自社のWebサイトは「会社の顔」です。そこには、創業からの歴史、理念、技術力、そして何より経営者自身のプライドが投影されます。だからこそ、「同業他社に見劣りしたくない」「一流企業のように洗練された印象を与えたい」という欲求が強く働きます。その結果、社長が求める「良いサイト」の定義は、「ビジュアルが美しい」「最先端の技術を使っている」「アニメーションが豪華である」といった、感覚的かつ主観的な要素に偏りがちです。

一方で、顧客(ユーザー)は全く異なる心理でサイトを訪れます。彼らは、あなたの会社のファンでもなければ、デザインの審査員でもありません。「業務上の課題を解決したい」「急ぎで製品を探している」「コストを削減したい」という、切実なニーズを持った人々です。

彼らにとっての「良いサイト」とは、「求めている情報がすぐに見つかる」「専門用語が少なく分かりやすい」「読み込みが速い」「問い合わせ方法が明確」なサイトです。社長が喜ぶ「ダイナミックなオープニング動画」は、急いでいる顧客にとっては「邪魔な待ち時間」でしかなく、社長が好む「抽象的でポエティックなキャッチコピー」は、顧客にとっては「何屋なのか分からないノイズ」でしかないのです。

デザインの「カッコよさ」が招く機能不全

このズレを放置したまま制作を進めると、見た目は立派だが全く機能しない「お飾りサイト」が完成します。具体的にどのような弊害が起きるのか、よくあるケースを見てみましょう。

英語ナビゲーションの罠

「スタイリッシュにしたい」という要望から、メニュー名をすべて英語にするケースがあります。「Company」「Solution」「Recruit」「Contact」。確かに見た目は綺麗に整います。しかし、一瞬で意味を理解できる日本人がどれだけいるでしょうか。特にBtoBの中小企業において、決裁者は必ずしも英語が得意な層ばかりではありません。

「会社概要」「サービス案内」「採用情報」「お問い合わせ」。漢字であれば0.1秒で認識できる情報が、英語になるだけで「思考のコスト」を強いることになります。顧客は、自分にストレスを与えるサイトを即座に離脱します。自己満足のスタイリッシュさは、ユーザビリティ(使いやすさ)の敵になり得るのです。

過剰なアニメーションによる機会損失

スクロールするたびに要素がフワフワと浮き上がったり、画面が回転したりする演出。これも経営者ウケが良い要素の一つです。しかし、これらはサイトの表示速度を著しく低下させます。

Googleの調査によれば、モバイルサイトの読み込みに3秒以上かかると、53%のユーザーが閲覧を諦めて離脱すると言われています。社長がオフィスの高速Wi-Fiと最新のPCで確認して「いいね」と言ったそのサイトは、外出先から古いスマホでアクセスしようとした見込み客には、真っ白な画面のまま表示されていないかもしれません。重たいサイトは、それだけで商機を捨てているのと同じです。

もし現在、社内で「デザインの好み」で意見が割れていたり、リニューアルの方向性が定まらずに困っている担当者様がいらっしゃれば、第三者の視点として私たちを議論に入れてみてください。忖度のないプロの視点で、御社のビジネスにとって何が「正解」なのかを診断します。

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主観を排し、「数字」と「論理」を共通言語にする

では、この致命的なズレを解消するにはどうすればよいのでしょうか。それは、議論の軸を「個人の好み(Art)」から「ビジネスの成果(Science)」へと強制的に移行させることです。

「カッコいいかどうか」で議論するから、声の大きい人の意見が通ります。「問い合わせが増えるかどうか」で議論すれば、答えはおのずと一つに絞られます。Web制作は、現代においてはもはや芸術活動ではなく、マーケティング活動の一部です。

ペルソナとカスタマージャーニーの徹底

社長の主観に対抗できる唯一の武器は、「顧客の事実」です。徹底したペルソナ設計(ターゲット像の明確化)を行い、彼らがどのような状況で、どんなキーワードで検索し、どんな情報を求めているのかをシナリオ化(カスタマージャーニーマップ作成)します。

「ターゲットである50代の製造業部長は、忙しい合間にスマホで検索します。小さな文字や英語のメニューは彼らにとって不親切であり、離脱の原因になります。だから、デザインの洗練さよりも、文字の大きさと日本語の分かりやすさを優先すべきです」

このように論理立てて説明されれば、まともな経営者であれば納得せざるを得ません。それでも「俺はこっちが好きだ」と言うのであれば、それは経営判断として「顧客を無視する」と宣言したことになります。そこまで議論を詰められるかどうかが、プロジェクトの成否を分けます。

競合ではなく「顧客」を見る

経営者は往々にして競合他社のサイトを気にします。「A社がリニューアルしたから、うちはもっと凄くしたい」。しかし、見るべきは競合ではありません。顧客です。競合サイトが使いにくければ、自社は「地味でも使いやすいサイト」を作るだけで勝てます。

CagraPROが提案する際は、デザインの意図をすべて言語化します。「なぜこのボタンがここにあるのか」「なぜこの色なのか」。すべてに「クリック率を上げるため」「視線を誘導するため」という機能的な理由を持たせます。デザインを装飾ではなく「機能」として定義することで、好みの入り込む余地をなくし、ビジネスツールとしての精度を高めていきます。

Webサイトは「優秀な営業マン」であるべき

最終的に、Webサイトは「24時間365日働く、超優秀な営業マン」であるべきです。

もしあなたが営業マンを雇うとして、見た目はモデルのように美しいが、顧客の話を聞かず、自分の自慢話ばかりを早口でまくしたて、肝心の商品説明もしない人物を採用するでしょうか。しませんよね。見た目は清潔感があれば十分、それよりも顧客の悩みに耳を傾け、的確な解決策を提示し、スムーズに契約まで誘導できる人物を採用するはずです。

Webサイトも同じです。社長が愛すべきは、自分の好みを反映した美しいサイトではなく、泥臭くても確実に問い合わせ(CV)を獲得してくるサイトであるはずです。

「良いサイト」の定義を書き換えてください。
良いサイトとは、社長を満足させるサイトではありません。
良いサイトとは、顧客を満足させ、その結果として企業の利益を最大化させるサイトです。

この視点の転換ができる企業だけが、Webをコストセンターではなく、プロフィットセンターに変えることができます。あなたの会社のサイトは、誰の方を向いていますか? 今一度、顧客の視点に立ち返って見直してみてください。

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著者:清宮 雄(株式会社カグラ 代表取締役) マーケティング、ブランディングおよび企業経営の領域において20年以上の実務経験を有する。国内外にてIT事業および教育事業を展開。