「Googleマップでお店の情報を更新したいのに、ログインできない」「口コミに返信しようとしたら、権限がないと表示された」。このような事態に陥り、慌てて確認してみると、Googleビジネスプロフィール(旧:Googleマイビジネス)の「オーナー権限」を、かつて契約していたWeb制作会社や、解約したはずのMEO対策業者が握ったままだった、というケースが後を絶ちません。
これは単なる管理上のミスではなく、企業のデジタル資産が「人質」に取られている極めて危険な状態です。Googleビジネスプロフィールは、今やWebサイト以上に集客に直結する重要なインフラです。そのコントロール権を他社に委ねているということは、いつ「閉業」にされても、勝手に写真を書き換えられても文句が言えない状態を意味します。
今回は、Web制作会社や代理店に握られてしまった「オーナー権限」を、自社の手に取り戻すための具体的な手順と、今後二度と同じトラブルを招かないための正しい管理体制について、プロフェッショナルの視点から徹底解説します。
なぜ「オーナー権限」が他社にあると致命的なのか
Googleビジネスプロフィールの権限には、「オーナー(メインのオーナー)」と「管理者(マネージャー)」の2種類が存在します。問題なのは、多くの企業がこの違いを理解せず、制作会社のアカウントを「メインのオーナー」にしてしまっていることです。
生殺与奪の権を握られるリスク
メインのオーナー権限を持つユーザーは、そのビジネス情報を完全にコントロールできます。情報の編集はもちろん、他のユーザー(つまり御社のアカウント)を削除することも、最悪の場合、ビジネスリスティングそのものをGoogleマップから削除(閉業)することも可能です。
悪質な業者の場合、契約解除を申し出た途端に「アカウントを削除します」と脅しをかけてきたり、高額な「アカウント譲渡手数料」を請求してきたりするケースがあります。また、業者が倒産して連絡がつかなくなった場合、パスワードも分からず、永遠に更新できない「幽霊アカウント」がネット上に残り続けることになります。これは、実店舗の鍵を元業者に預けたまま、連絡が取れなくなっているのと同じくらい恐ろしい状況です。
MEO対策と称した「囲い込み」の手口
一部のMEO(マップ検索最適化)業者は、「弊社で管理するためにオーナー権限が必要です」と言って権限を要求しますが、これは半分正解で半分嘘です。通常の運用代行であれば「管理者」権限があれば十分だからです。
あえてオーナー権限を要求するのは、顧客を自社サービスから離れられなくするための「囲い込み(ロックイン)」戦略である可能性が高いです。本来、Googleビジネスプロフィールのガイドラインでも、ビジネスの実質的な所有者がオーナー権限を持つべきであると明記されています。
権限を取り戻すための「平和的」な手順
まず行うべきは、現在の管理者(制作会社や業者)に対する、正規の手続きによる移管依頼です。相手が誠実な業者であれば、数分で終わる作業です。
ステップ1:現状の権限確認
まず、自社のGoogleアカウントでビジネスプロフィールにログインしてみてください。「アクセス権限が必要です」と表示される場合、あるいはログインできても「ユーザー管理」画面で自分の権限が「管理者」になっており、他社のアカウントが「メインのオーナー」になっている場合、権限移管が必要です。
ステップ2:権限の譲渡依頼
相手と連絡が取れる場合は、メールや電話で「メインのオーナー権限を弊社のアカウント(◯◯@gmail.com)に譲渡してください」と明確に伝えます。
相手側の作業としては、管理画面の「ユーザー」設定から、御社のアカウントの権限を「管理者」から「メインのオーナー」に変更するだけです。この際、「明日やります」「担当者が不在で」とのらりくらりとかわされることがありますが、作業自体は1分で終わるものなので、期限を切って強く要求してください。
相手が応じない、連絡がつかない場合の「強制奪還」プロセス
問題は、相手と連絡がつかない、あるいは拒否された場合です。しかし、諦める必要はありません。Googleには、正当なビジネスオーナーが権限を取り戻すための「オーナー権限のリクエスト」という救済プロセスが用意されています。
Googleへの「アクセス権のリクエスト」
1. Googleマップで自社のお店を検索し、「ビジネスオーナーですか?」というリンクをクリックします(または、Googleビジネスプロフィールの新規登録画面から、自社の店名を検索して選択します)。
2. 「このビジネスプロフィールは別のアカウント(ヒント:xx…)によって管理されています」と表示されます。
3. ここで「アクセス権をリクエスト」ボタンをクリックします。
4. 申請フォームが表示されるので、自身の立場(所有者)、権限レベル(オーナー)、連絡先を入力して送信します。
3日間の待機と「申し立て」
リクエストを送信すると、現在のオーナー(業者)にメールで通知が届きます。ここで相手が承認すれば解決です。しかし、相手が「拒否」するか、あるいは「3日間無視(放置)」した場合、次のフェーズに進めます。
3日が経過しても反応がない場合、リクエスト送信時の確認メールにあるリンクからステータスを確認すると、「申し立て」や「確認」というボタンが表示されるようになります。これをクリックすると、Googleによる強制的なオーナー確認プロセスが始まります。
多くの場合、店舗の電話番号への自動音声コール、あるいは店舗住所へのハガキ郵送による認証コードの入力が求められます。この認証(確認コードの入力)をクリアすれば、現在のオーナー(業者)の権限は剥奪され、晴れて御社のアカウントがメインのオーナーとして認定されます。
つまり、実際に店舗で電話を受けたり郵便物を受け取ったりできる「実在するオーナー」であれば、最終的には必ず権限を取り戻せる仕組みになっているのです。
もし、このプロセスを進めるのが不安だ、あるいは相手業者との交渉がこじれて法的な懸念があるといった場合は、一度私たちにご相談ください。技術的なサポートはもちろん、セカンドオピニオンとして最適な対処法をアドバイスします。
トラブルを避けるための「鉄則」と管理体制
無事に権限を取り戻せたとしても、喉元過ぎれば熱さを忘れてはいけません。今後、Web制作会社や広告代理店と付き合う際には、以下のルールを徹底してください。
■H3:アカウントは「自社発行」が原則
Googleビジネスプロフィールに限らず、ドメイン、サーバー、Googleアナリティクス、広告アカウントなど、Web集客に関わる全てのアカウントは、必ず「自社で取得したGoogleアカウント(またはメールアドレス)」で開設してください。
制作会社に「面倒だから全部やっておいて」と丸投げし、業者のメールアドレスで登録させてはいけません。それは家の権利書を他人の名前で作るようなものです。開設作業を代行してもらう場合でも、必ず「IDとパスワード」は自社で管理し、いつでもログインできる状態にしておくことが鉄則です。
■H3:外部パートナーには「管理者」権限のみを付与する
制作会社に運用を任せる場合は、御社がオーナーのまま、制作会社のアカウントを「管理者(マネージャー)」として招待してください。
管理者権限があれば、日々の投稿や写真の追加、口コミへの返信など、運用に必要な作業は全て行えます。唯一できないのは「アカウントの削除」や「権限の変更」だけです。これで十分なのです。もし「オーナー権限がないとSEO対策ができない」と言ってくる業者がいれば、それは知識がないか、悪意があるかのどちらかだと判断して差し支えありません。
■H2:Web上の「看板」は経営者の持ち物
Googleビジネスプロフィールは、現代における「店舗の看板」そのものです。看板の掛け替えや修理を業者に頼むことはあっても、看板の所有権まで業者に渡してしまう経営者はいません。
しかし、デジタルの世界では、この「所有と利用」の境界線が曖昧になりがちです。だからこそ、契約時にしっかりと線引きを行い、自社の資産を守る意識を持つ必要があります。
■H2:CagraPROが約束する「透明性」
私たちCagraPRO(カグラプロ)では、Webサイト制作や運用代行において、お客様のアカウント権限を不当に拘束することは一切ありません。全てのアカウントはお客様名義で取得し、私たちはあくまで「パートナー」として、必要な権限のみをお借りして運用します。契約終了時には、スムーズに権限をお返しし、お客様自身で運用を継続できる状態を整えます。
それは、私たちが「囲い込み」ではなく、「成果」で信頼を繋ぎ止めたいと考えているからです。権限を縛り付けなければ逃げられてしまうようなサービスなら、提供する価値がないとさえ考えています。
「今のアカウント状況が正常かどうかわからない」「前の業者の設定が残ったままになっている」。そのような不安をお持ちでしたら、ぜひ一度お問い合わせください。御社のデジタル資産の棚卸しと、健全な管理体制の構築をお手伝いします。
著者:清宮 雄(株式会社カグラ 代表取締役) マーケティング、ブランディングおよび企業経営の領域において20年以上の実務経験を有する。国内外にてIT事業および教育事業を展開。