人材紹介会社(転職エージェント)や人材派遣会社のWebサイト構築において、永遠のテーマとも言える難問があります。それは「トップページを『求職者(個人)』と『求人企業(法人)』のどちらに向けるべきか」という問題です。
人材ビジネスは「求職者」と「求人企業」の両輪で成り立つツーサイドプラットフォームです。どちらが欠けてもビジネスは成立しません。そのため、多くの企業がトップページのメインビジュアルを左右に分割し、「お仕事をお探しの方はこちら」「人材をお探しの企業様はこちら」と均等に並べるデザインを採用しがちです。
しかし、Webマーケティングの観点から申し上げますと、この「どっちつかず」のアプローチは、多くの場合において失敗の要因となります。ターゲットを絞りきれないサイトは、メッセージが希薄になり、結果としてどちらのユーザーにも刺さらないからです。今回は、人材紹介サイトにおけるトップページの最適解と、ターゲットを振り分けるための構造設計について解説します。
現在の市況では「求職者ファースト」が定石
結論から申し上げます。特定のニッチなビジネスモデルを除き、現在の日本の労働市場においては、トップページのメインメッセージは「求職者(個人)」に向けるべきです。理由は単純明快です。圧倒的な「売り手市場」だからです。
ボトルネックはどちらにあるか
Webサイトの戦略は、現在の経営課題(ボトルネック)を解消するために存在すべきです。今、多くの人材紹介会社が抱えている悩みは「案件はあるが、紹介できる人がいない」という人材不足です。企業側は喉から手が出るほど人材を欲しており、放っておいても人材紹介会社を探しています。一方で、優秀な求職者は奪い合いであり、彼らをサイトに引き留めることこそが最難関のミッションです。
この状況下で、トップページの貴重なファーストビューを企業向けメッセージで埋めてしまうのは得策ではありません。求職者は、サイトを開いた瞬間に「自分のためのサイトだ」「希望する求人がありそうだ」と感じなければ、3秒で離脱します。まずは求職者の心理的ハードルを下げ、検索やお申し込みへ誘導することを最優先に設計するのが、現代の定石です。
BtoBとBtoCの行動心理の違い
なぜ「企業向け」をメインにしなくて良いのか。それは、企業の採用担当者と個人の求職者では、Webサイト内での行動パターンが全く異なるからです。
企業の採用担当者(BtoBユーザー)は、業務として人材会社を探しています。そのため、トップページが求職者向けのデザインであっても、すぐに離脱することはありません。彼らはヘッダーメニューやフッターにある「採用担当の方へ」「求人掲載について」というリンクを自ら能動的に探し出し、そこから企業専用ページ(LP)へと移動してくれます。
対して、個人の求職者(BtoCユーザー)は直感的・受動的です。「なんとなくいい仕事ないかな」というテンションで訪れるため、少しでも「ここは企業向けのサイトか?自分向けではないな」と誤解されると、すぐに戻るボタンを押してしまいます。だからこそ、トップページの「顔」は、求職者を歓迎する表情で作る必要があるのです。
企業向け導線は「入り口」を分けるだけでいい
では、企業向けの情報を軽視していいかというと、もちろんそうではありません。重要なのは「トップページで混在させない」ことであり、「サイト内部で完全に動線を分ける」ことです。
グローバルナビゲーションでの誘導
トップページのメインビジュアルやキャッチコピーは求職者に振り切ります。その代わり、画面右上の最も目立つ位置(ヘッダーのCTAボタン)に、色を変えて「求人掲載をお考えの企業様はこちら」というボタンを設置します。
これにより、採用担当者は迷うことなく専用ページへ移動できます。企業向けページでは、一転してビジネスライクなトーンで、紹介手数料の体系や、登録人材のデータベース(年齢層・スキル)、成約実績などを論理的に訴求します。トップページという「玄関」は求職者用にし、企業には専用の「通用口」を用意するという考え方です。
SEOの観点からの分離
SEO(検索エンジン最適化)の観点からも、ターゲットの分離は必須です。Googleは「1ページ1テーマ」を推奨しています。
同じトップページの中に「転職 おすすめ」というキーワード(求職者用)と、「人材紹介 手数料」というキーワード(企業用)を詰め込むと、Googleは「このページは何について書かれたページなのか」を判断できず、評価が分散してしまいます。
トップページは「求職者獲得」のキーワードで戦い、企業向けページは下層ディレクトリ(/client/など)や別ドメインで「企業集客」のキーワードで戦う。このように戦場を分けることが、検索順位を上げる近道です。
もし現在、自社サイトのトップページがどっちつかずの状態になっている、あるいは企業向けページへの誘導がうまくいっていないとお悩みであれば、一度私たちにご相談ください。現状のアクセス解析データに基づき、最適な動線設計を診断いたします。
「企業向け」をトップにすべき例外パターン
基本は「求職者ファースト」ですが、例外的に「企業向け」をトップページに据えるべきケースも存在します。それは、ビジネスモデルが「登録型」ではなく「サーチ型(ヘッドハンティング)」である場合や、超ニッチな専門職特化型の場合です。
エグゼクティブサーチの場合
年収1000万円以上の経営幹部層などをターゲットにする場合、Webサイトから安易に登録させるモデルではないことが多いため、「私たちは独自の人脈で最高の人材を探し出します」という企業向けの信頼感を前面に出す必要があります。この場合、求職者(候補者)もまた、「しっかりした企業と取引している信頼できる会社か」を企業目線でチェックするため、BtoB向けの重厚なデザインが好まれます。
スタートアップで「求人はまだない」場合
立ち上げ直後の人材会社で、求職者を集めても紹介できる案件がまだ少ない場合は、まずは企業開拓に全力を注ぐ必要があります。このフェーズでは、トップページで企業に対して「初期費用無料キャンペーン」などを打ち出し、求人案件(在庫)を確保することを優先する戦略も考えられます。
求職者向けサイトの品質が、企業への営業ツールになる
最後に、経営者の皆様に認識していただきたい重要な視点があります。それは、「求職者向けのトップページを作り込むことが、結果として企業の信頼獲得に繋がる」という事実です。
採用担当者は、人材紹介会社と契約する際、必ずその会社のWebサイト(求職者が見る画面)をチェックします。そこで「使いにくい」「デザインが古い」「求人が探しにくい」と感じたらどう思うでしょうか。「こんなイケてないサイトに、優秀な若手が登録するはずがない」と判断され、契約を見送られる可能性があります。
逆に、スマホで使いやすく、魅力的な特集が組まれ、活気のあるサイトであれば、「ここなら自社の求人も魅力的に掲載してくれそうだ」「集客力がありそうだ」と期待を持ってもらえます。つまり、求職者ファーストのサイトを作ることは、最強のBtoB営業ツールを作ることと同義なのです。
CagraPRO(カグラプロ)では、人材業界特有の「二兎を追う難しさ」を理解した上で、御社の事業フェーズと強みに合わせたサイト設計を行います。求職者には「登録したい」と思わせ、企業には「依頼したい」と思わせる。その絶妙なバランスと導線を、論理的に構築します。
「今のサイトはごちゃごちゃしていて、誰に向けたものか分からない」「リニューアルで集客を加速させたい」。そのような課題をお持ちでしたら、ぜひ一度お問い合わせください。
著者:清宮 雄(株式会社カグラ 代表取締役) マーケティング、ブランディングおよび企業経営の領域において20年以上の実務経験を有する。国内外にてIT事業および教育事業を展開。