「採用予定は今のところないから、採用ページは作らなくていい」「人が欲しくなったら、その都度インディードや求人媒体にお金を払えばいい」。コーポレートサイトの立ち上げやリニューアルの際、経営者様からこのような声を耳にすることが少なくありません。特に少数精鋭のBtoB企業や、スタートアップ企業において、この傾向は顕著です。
しかし、Webコンサルティングの現場に立つプロフェッショナルとして、私は明確に警鐘を鳴らします。コーポレートサイトに「採用情報(Recruit)」のコンテンツが存在しない、あるいは「現在募集しておりません」の一行で済まされている状態は、単に求職者を逃しているだけではありません。それは、既存顧客からの「信頼」、未来の優秀な人材との「接点」、そして長期的な「採用コストの削減機会」という、計り知れない資産をドブに捨てているのと同じです。今回は、採用ページを持たない企業が失っている3つの損失と、今すぐ採用ページを構築すべき経営的な理由について解説します。
取引先が見ているのは「サービス」だけではない
最大の誤解は、「採用ページは求職者のためにある」という思い込みです。BtoBビジネスにおいて、採用ページを最も熱心に見ている層の一つは、実は「取引先(見込み客)」や「金融機関」です。
企業の「成長性」と「継続性」の証明
新規の取引を開始する際、担当者は相手企業のWebサイトを必ずチェックします。その際、サービス内容や会社概要と並んで見られるのが採用情報です。なぜなら、そこには企業の「勢い」と「体力」が色濃く反映されるからです。
常に人材を募集し、求める人物像や未来のビジョンを語っている企業は、「事業が成長している」「組織として拡大フェーズにある」というポジティブな印象を与えます。逆に、採用情報が全くない、あるいは何年も更新されていない企業は、「現状維持で精一杯なのか」「人が定着していないのではないか」、最悪の場合は「事業を畳もうとしているのではないか」というネガティブな憶測を呼びます。
採用ページは、単なる募集要項の掲示板ではありません。「私たちは未来に向けて投資をしている」という、ステークホルダーに対する所信表明の場なのです。
BtoBこそ「人」が商品の品質を担保する
形のある商品を売るメーカーと異なり、コンサルティングやシステム開発、デザインといったBtoBの無形商材において、商品の品質は「人」そのものです。
クライアントは、「どのようなスキルを持った人間が担当してくれるのか」「どのような哲学で働いているチームなのか」を非常に気にしています。採用ページにある「先輩社員の声」や「代表メッセージ」、「オフィスの風景」といったコンテンツは、求職者だけでなく、クライアントに対しても「顔の見える安心感」を提供します。「こんなに熱量のあるスタッフがいる会社なら、仕事を任せても大丈夫だろう」。そう思わせるためのブランディングツールとして、採用コンテンツは極めて有効に機能します。
潜在層(タレントプール)との接点消失
次に、本来のターゲットである求職者に対する機会損失です。「求人媒体に出せば人は来る」とお考えかもしれませんが、それは「今すぐ転職したい顕在層」に限った話です。本当に優秀な人材の多くは、今すぐには転職を考えていない「潜在層」の中にいます。
求人媒体という「借り物の場所」の限界
リクナビやマイナビ、Indeedなどの外部メディアは、あくまで「条件(給与、勤務地、福利厚生)」で比較される場所です。フォーマットが決まっており、他社との差別化を図るには限界があります。また、掲載期間が終われば情報は消滅し、資産にはなりません。
一方で、自社サイトの採用ページ(オウンドメディア)は、表現の自由度が無限大です。創業のストーリー、苦労話、独自のカルチャー、少し変わった制度など、条件面では測れない「エモさ(共感)」を訴求できます。
優秀な人材ほど、条件ではなく「共感」で会社を選びます。ふとサイトを訪れた時に、魅力的な採用コンテンツがあれば、「今は転職しないけれど、面白そうな会社として覚えておこう」というタレントプール(候補者リスト)に入ることができます。採用ページがない企業は、この「未来の採用候補」との出会いを自ら遮断しているのです。
もし現在、採用ページがない、あるいはあっても募集要項のPDFが貼ってあるだけという状態なら、それは非常にもったいないことです。まずは、簡単なインタビュー記事や、求める人物像を語るページを一枚追加するだけでも、企業の「体温」は伝わるようになります。
ミスマッチによる「見えないコスト」の増大
採用ページを持たないことによる弊害は、採用した後にも現れます。「入社後のミスマッチ」と「早期離職」です。
ネガティブ情報を正しく伝えるフィルター機能
求人媒体では、どうしても「良いこと(メリット)」ばかりを強調しがちです。その結果、入社してから「思っていたのと違う」と辞めてしまうケースが後を絶ちません。
しかし、自社サイトであれば、あえて厳しい現実や、社風に合わない人の特徴などの「ネガティブ情報」もしっかりと伝えることができます。「うちは残業も多いし、泥臭い仕事も多い。それでも成長したい人だけ来てほしい」というメッセージを発信することで、覚悟のない求職者を事前にフィルタリング(スクリーニング)することができます。
採用コストの中で最も高いのは、採用フィーではなく「すぐに辞められること」による教育コストと機会損失です。自社サイトで深い情報を発信することは、最強のミスマッチ防止策となり、結果として採用コストを劇的に下げます。
Googleしごと検索(Google for Jobs)への対応
技術的な観点からも、自社サイトに採用ページを持つことは必須です。現在は「Googleしごと検索」が求人検索の入り口として定着しています。
自社サイト内に適切な構造化データを用いた採用ページがあれば、広告費をかけずにGoogleの検索結果トップに求人を表示させることが可能です。これを活用しない手はありません。外部媒体に依存し続ける「フロー型の採用」から、自社サイトで集客する「ストック型の採用」へ切り替えるためにも、基盤となるページが必要です。
経営者の「本気度」を可視化せよ
「人は城、人は石垣」という言葉があるように、企業経営において人材こそが最大の資産です。その人材を募集するページがないということは、外部に対して「人材を重要視していない」と公言しているようなものです。
採用ページを作ることは、単にWebページを増やす作業ではありません。自社の強みは何か、どんな仲間と働きたいか、どこへ向かうのか。経営者自身が自社のアイデンティティを再定義する、経営戦略そのものです。
CagraPRO(カグラプロ)では、単なる募集要項の羅列ではない、企業のDNAを伝える採用サイトの構築を得意としています。求職者の心を動かし、取引先の信頼を勝ち取り、競合他社と明確に差別化する。そんな「攻め」の採用コンテンツをご提案します。
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著者:清宮 雄(株式会社カグラ 代表取締役) マーケティング、ブランディングおよび企業経営の領域において20年以上の実務経験を有する。国内外にてIT事業および教育事業を展開。