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Webサイト制作

Webサイトの更新を「新入社員」に任せる際のリスクと教育マニュアル

「とりあえず若いからパソコン詳しいでしょ?Webサイトの更新、君に任せるよ」

春先になると、多くの中小企業でこのような会話が交わされます。Web専任の担当者がいない企業において、Webサイトのお知らせ更新やブログの執筆といった業務は、最も立場の弱い「新入社員」に押し付けられがちです。

経営者としては「デジタルネイティブ世代だから大丈夫だろう」「外注費を削減できて一石二鳥だ」とお考えかもしれません。しかし、Web制作のプロフェッショナルとして、はっきりと申し上げます。その判断は、会社の顔であるWebサイトを崩壊させ、長年積み上げてきたSEO評価を一瞬で失う「ロシアンルーレット」のような行為です。

SNSを使いこなすことと、CMS(WordPressなど)を管理することは全くの別物です。今回は、Webサイトの管理を新人に任せる際に発生する致命的なリスクと、事故を防ぐために整備すべき環境・マニュアルについて解説します。

「デジタルネイティブ」という幻想と現実

まず、経営者が陥りがちな「若者=ITに強い」という誤解を解く必要があります。確かに彼らはスマホの操作やInstagramの投稿には長けています。しかし、それは「消費するためのUI」に慣れているだけであり、Webサイトの裏側にあるHTMLの構造や、サーバーの仕組み、画像の解像度と容量の関係性を理解しているわけではありません。

Word感覚でのコピペがサイトを破壊する

最も頻発する事故が、レイアウト崩れです。新入社員は悪気なく、WordやExcelで作った原稿をそのままコピーし、WordPressの投稿画面にペーストします。するとどうなるか。Wordに含まれていた不要な書式コード(装飾データ)まで裏側で貼り付けられてしまい、サイト全体のフォントが変わってしまったり、スマホで見ると画面からはみ出したり、デザインが大きく崩れる現象が起きます。
彼らには「プレーンテキストで貼り付ける」という概念がありません。崩れた理由も分からず、さらに修正しようとして傷口を広げ、最終的にはトップページまで真っ白にしてしまう。決して珍しい話ではないのです。

著作権と肖像権の意識欠如

もう一つの大きなリスクは、コンプライアンスに関わる「権利侵害」です。「良い感じの画像をネットで見つけてきました」と言って、Google画像検索で拾った他人の画像を勝手にアイキャッチに使ってしまう。これは著作権法違反であり、企業としては損害賠償請求を受けるリスクがあります。
SNS感覚で「引用」のつもりでも、企業サイトで行えばそれは「盗用」です。フリー素材サイトの規約(商用利用の可否やクレジット表記)を理解していない新人に更新権限を与えるのは、無免許運転をさせるのと同じくらい危険です。

SEO評価を「無知」によって毀損する

見た目の崩れは直せば済みますが、SEO(検索エンジン最適化)へのダメージは深刻です。新入社員は「URLの意味」や「見出しタグの重要性」を知りません。

URLの変更とリンク切れ

「記事のタイトルを変えたので、ついでにURLも変えておきました」。これがどれほど恐ろしいことか。URLが変われば、これまでGoogleから受けていた評価はリセットされます。外部からのリンクも全て「404エラー(ページが見つかりません)」となり、サイト全体のドメインパワーが下落します。リダイレクト(転送)処理を知らないままURLをいじることは、Web担当者にとって禁忌ですが、新人にはその知識がありません。

巨大画像のアップロードによる表示遅延

「スマホで撮った綺麗な写真をそのまま載せました」。最近のスマホ写真は高画質で、1枚あたり数MB(メガバイト)もあります。これを圧縮せずに何枚もアップロードすれば、ページの表示速度は劇的に遅くなります。
Googleは表示速度を重要な評価指標としているため、結果として検索順位が下がります。また、サーバーの容量を圧迫し、将来的なコスト増にも繋がります。

もし現在、新入社員にマニュアルなしで更新を任せているなら、今すぐ管理画面を確認してください。すでに不要なプラグインが入れられていたり、画像フォルダがカオスになっていたりする可能性があります。手遅れになる前に、プロによる診断と環境整備をお勧めします。

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事故を防ぐための「3つの防波堤」

では、新人に更新業務を任せてはいけないのかというと、そうではありません。適切な「権限管理」と「マニュアル」があれば、彼らは戦力になります。

1. 「管理者」権限は絶対に渡さない

WordPressなどのCMSには、ユーザーごとに権限レベルを設定する機能があります。新入社員には、すべての操作が可能な「管理者(Administrator)」権限を決して渡してはいけません。
記事の投稿・編集のみが可能な「投稿者(Author)」または「編集者(Editor)」権限のアカウントを個別に発行してください。これにより、彼らが誤って「サイト全体の設定」や「テーマの編集」、「プラグインの削除」といった致命的な操作を行うことをシステム的に防ぐことができます。

2. 本番環境ではなく「ステージング環境」で練習させる

いきなり本番公開されているサイトを触らせるのはリスクが高すぎます。必ず「ステージング環境(テストサイト)」を用意し、まずはそこで記事を投稿させ、上司や先輩がチェックした上で本番に反映するフローを構築してください。
Web制作会社に依頼すれば、本番と全く同じ環境のテストサイトを構築することは容易です。そこなら、何度失敗しても、レイアウトを壊しても、企業の信用に傷はつきません。

3. 「やってはいけないことリスト」のマニュアル化

通常のマニュアルは「やり方(How to)」が書かれていますが、新人教育で重要なのは「禁止事項(Don’t)」のリスト化です。

①Wordからの直接コピペ禁止(一度メモ帳に貼る)。

②横幅1200px以上の画像アップロード禁止(圧縮ツールを通す)。

③ネット上の画像の無断使用禁止。

④既存の固定ページ(会社概要など)の編集禁止。

⑤パーマリンク(URL)の変更禁止。

これらを明文化し、デスクの横に貼らせるくらい徹底する必要があります。

Webサイトは「24時間働くトップセールスマン」

新入社員がいきなり重要顧客との商談に一人で行かされることはないはずです。必ず先輩が同行し、名刺の渡し方からトークスクリプトまで教育を受けるはずです。
Webサイトも同じです。24時間365日、世界中の顧客に対応する「トップセールスマン」です。その身だしなみ(更新業務)を、教育を受けていない新人に丸投げすることは、経営判断として正しいでしょうか。

CagraPRO(カグラプロ)では、Webサイトを納品するだけでなく、その後の運用を見据えた「更新マニュアル」の作成や、担当者向けの「レクチャー会」を実施しています。また、どうしても社内リソースで賄えない場合は、プロによる更新代行プランもご用意しています。

「新人が壊してしまったサイトを直してほしい」「誰でも安全に更新できるようなシステムに改修したい」。どのようなご相談でも構いません。Webサイトを、リスクではなく資産として運用するための体制づくりをサポートします。

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著者:清宮 雄(株式会社カグラ 代表取締役) マーケティング、ブランディングおよび企業経営の領域において20年以上の実務経験を有する。国内外にてIT事業および教育事業を展開。