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用語解説

「特定商取引法に基づく表記」が必要なサイトと不要なサイトの境界線

Webサイトのフッター付近によくある「特定商取引法に基づく表記(以下、特商法表記)」のリンク。自社のサイトを立ち上げる際、「これってうちのサイトにも必要なの?」と迷う担当者様は非常に多いです。法律の話は難解で、ネットで検索してもECサイト(ネットショップ)向けの情報ばかりが出てきて、BtoBのコーポレートサイトやサービスサイトにおける判断基準が曖昧なままであることが少なくありません。

結論から言えば、この表記が必要か不要かの境界線は「Webサイト上で金銭が発生する契約(通信販売)が完結するかどうか」にあります。今回は、Web制作のプロフェッショナルとして、法的なリスクを回避し、かつユーザーの信頼を損なわないための「特商法表記」の設置基準について、実務的な観点から解説します。

境界線は「Web上で契約・決済が完結するか」

まず、特商法表記が「法的に義務付けられる」のは、そのWebサイトが「通信販売」を行っている場合です。ここで言う通信販売とは、Amazonのような物販だけを指すのではありません。「郵便、電話、FAX、インターネット等で申込みを受け、契約を結ぶもの」全てが対象です。

特商法表記が「必要」なケース(通信販売に該当)

以下の機能を持つサイトは、特商法表記が必須です。

カート機能があるECサイト:物販はもちろん、ソフトウェアのダウンロード販売なども含みます。

①Web上で申し込みが完結する有料サービス: 例えば、月額制のSaaS(クラウドツール)、オンラインサロン、有料メルマガなど。クレジットカード決済機能がついていれば間違いなく該当します。

②有料セミナー・イベントの参加申し込み: Webフォームから申し込み、参加費を支払う(事前決済・当日払い問わず契約が成立する場合)形式のもの。

特商法表記が「原則不要」なケース

一方で、以下のようなサイトは「通信販売」には該当しないため、特商法表記は法的には不要です。

①一般的なコーポレートサイト: 会社案内、事業紹介がメインのサイト。

②問い合わせ・資料請求のみのサイト: 「お問い合わせフォーム」から連絡をもらい、その後、担当者がメールや電話で商談を行い、見積書を出して契約に至るパターン。Webサイトはあくまで「きっかけ」であり、契約の場ではないため不要です。

③無料会員登録: 金銭の授受が発生しないサービスであれば不要です。

つまり、「ユーザーが申し込みボタンを押した時点で、支払い義務(契約)が発生するか」が最大の判断基準となります。後日、請求書払いであっても、Web上で申し込みが確定するなら特商法の対象となる可能性があります。

BtoB取引における「適用除外」の落とし穴

ここで多くの担当者が混乱するのが、「BtoB(企業間取引)なら特商法は関係ないのでは?」という点です。

確かに、特定商取引法第26条には「購入者が営業のために(=事業として)契約する場合は適用除外とする」という規定があります。つまり、完全にプロ同士の取引であれば、クーリングオフなどの消費者保護ルールは適用されず、広告表示義務(特商法表記)も免除されるという解釈が一般的です。

それでも「書いておく」のが正解である理由

しかし、私たちはBtoBサイトであっても、Web上で申し込みが完結するサービスであれば「特商法表記(またはそれに準ずる詳細な取引条件)」を記載することを強く推奨しています。理由は2つあります。

①「事業者」の線引きが難しい:申し込みをしてきた相手が、法人ではなく個人事業主や、これから開業する個人の場合、「消費者」とみなされるリスクが残ります。もし表記を怠っていれば、行政処分の対象になり得ます。

②信頼性の担保: 住所、電話番号、責任者名、返品(キャンセル)ルールを明記することは、コンプライアンス意識の高さを示す「身分証明書」のようなものです。「法律で義務じゃないから書かない」という態度の企業と、進んで情報を開示している企業、どちらが信頼できるかは明白です。

記載すべき内容と、よくある「書き漏らし」

もし特商法表記が必要なサイト(または信頼のために設置するサイト)を作る場合、以下の項目は最低限網羅する必要があります。

①販売業者の氏名または名称:法人なら登記簿上の名称。
②代表者または責任者の氏名:法人の代表者、またはWeb通信販売の業務責任者。
③住所:実際に活動している拠点の住所(バーチャルオフィスの場合は条件付きで可だが注意が必要)。
④電話番号:確実に連絡が取れる番号。
⑤販売価格・送料:税込価格での表示。
⑥代金の支払い時期・方法:クレジットカード、銀行振込など。
⑦商品の引渡時期:注文から何日以内に発送・提供するか。
⑧返品・交換(キャンセル)に関する特約:これが最も重要です。 BtoBやデジタルコンテンツの場合、「返品不可」とするケースが多いですが、その旨を明記していないと、法律上は「8日以内なら返品(解除)可能」となってしまいます。トラブル防止のため、「商品の性質上、返品はお受けできません」とはっきり書く必要があります。

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法律を守ることは、顧客を守ること

「住所を公開したくない」「電話対応が面倒だから番号を載せたくない」という相談を受けることもあります。お気持ちは分かりますが、Webという非対面の取引において、連絡先を隠そうとする姿勢は、顧客に「何かあったら逃げるつもりではないか」という不安を与えます。

コンプライアンスは、単なる「守り」ではありません。正々堂々と情報を開示することは、競合他社との差別化になり、最終的にはコンバージョン率(成約率)を高める「攻め」の武器になります。

CagraPRO(カグラプロ)では、単に美しいサイトを作るだけでなく、こうした法的な要件定義やリスク管理も含めたサイト設計を行います。「うちはECじゃないけど、このサービス申し込みフローだと特商法は必要なの?」「利用規約はどうすればいい?」といった実務的な疑問にも、これまでの豊富な経験からアドバイスいたします(※最終的な法的判断は弁護士等の専門家への確認を推奨する場合がありますが、実務上のセオリーは共有可能です)。

曖昧なままサイトを公開し、後からトラブルになる前に。まずはプロの視点でサイトの健全性をチェックしてみませんか。

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著者:清宮 雄(株式会社カグラ 代表取締役) マーケティング、ブランディングおよび企業経営の領域において20年以上の実務経験を有する。国内外にてIT事業および教育事業を展開。